2008年6月1日(日)
in
out
温泉郷
名称
所  感
86 8:00
8:15
亀川
望潮泉
快晴となり、真っ青な空に草原色の山々が美しい。新緑の山はエネルギーに満ちて自分も力が湧いてくる。今日の一湯目は亀川の望潮泉である。ナビの示すあたりを往来し、住宅街の中にボロ屋を発見した。木造平屋の共同湯はかなりの鄙び度で嬉しくなる。共同湯の朝風呂というのはとても良い。透明、無味、無臭のクリアな湯であるが、静かな浴室い朝陽が差し込み、自然に力が抜けて気持ちが良い入浴となった。分析表なし。
87 8:36
8:50
周辺
七ッ石温泉
稲荷神社特有の赤い奉納幟で、すぐに場所がわかった。古戦場跡地である七ツ石公園の正面にはしめ縄が張られた巨岩が鎮座し、いかにも目に見えない何かが宿っているような気がする。その横に赤い鳥居があり、正面の平屋建物が共同湯、左手にお稲荷さんが祭ってある。小さな公園内には他にも巨岩が点在し、全部で七つあることから七ツ石と名付けられたようだ。周辺の土地開発の際、温泉を引いたようである。”四の湯”の神社版といった雰囲気である。小さな浴室に小判型浴槽一つで、透明、無味、微かなカビ・コケ臭のクリアのお湯であった。硫黄臭はしなかった。
88 9:30
10:35
塚原
塚原温泉火口乃泉
伽藍岳は今もなお噴煙をあげる活火山である。登山者用駐車場をさらに登りつめると、塚原温泉火口乃湯に到着した。広い駐車場の中央にコンクリートの旧湯小屋があり、端に新しい平屋の休憩所、メインの湯小屋、さらに奥に家族風呂と露天風呂がある。塚原温泉の泉質は強烈で、H-40.1,Al-295,Fe-396,HSO4-4227,SO4-315、H2S-8.3 総計9059mgのHAlFe-SO4HSO4泉 という見たことのない温泉表示であった。Ph1.4は玉川温泉につづく日本第2位の酸性度であり、アルミニウム含有量も毒沢温泉の2倍以上で日本第2位、そして鉄分は日本第1位とのことであり、驚異的である。
まずは内湯に入ってみる。木造の湯小屋に想像より大き目の浴槽があり、お湯は綺麗な黄色透明、メローイエローの湯である。湯小屋に差し込む陽に当たりキラキラと黄金色に光りとても綺麗だった。入浴するとヒリヒリと刺激があり、強い酸味と渋、えぐ味、焦げたゴム臭がした。硫黄臭はこの近辺に充満しており、お湯の臭いであるのかは分からない。
家族風呂が良いと聞いたので、先客を待つ間に噴火口へ言ってみる。もともと噴気帯の珪酸鉱山であったところ、'95年の作業中に陥没し、熱泥が噴出するようになったとのこと。整備された歩道を登ると硫化水素臭がきつくなり、荒涼とした地獄帯が開ける。中央にはぽっかりと口を開いた火口が見えた。異様な音とともに吹き上げる噴煙、泥を吐き出す火口、それを囲むのは新緑眩い木々である。この場所にいると大地の鼓動を感じずにはおれない。
パワーに圧倒されて戻ると丁度家族風呂が空いた。小ぶりの浴槽には色の付いていない透明のお湯が張られ、入浴するとズルリと肌が剥けているような感触である。口に含めば、今度は歯が溶けていくような感じで内湯よりさらに強烈であった。
泉質といい、名人達成のシチュエーションといい、この塚原温泉は忘れられない思い出の湯となるだろう。スタンプ張の最後に納まった金色のスタンプが輝かしい。

おまけレポート
名人達成はやはり嬉しかったが、それほど感慨に浸るほどではなく、よし!終わった!といったサバサバした気持ちであった。
温泉道の企画をこれだけ賞賛しながらも、別府の湯はもういいや、という気分になり、別のところに興味が向いてしまった。
別のところ、というのは長湯、七里田の炭酸泉である。 塚原から湯布院を経由して竹田市まで足を伸ばした。
湯布院温泉
庄屋の館
由布院の市街外れにある旅館。木造母屋を中心に離れが点在していた。母屋は素敵な佇まいだが、離れの建物は、よくある別荘のようであまり風情はなかった。母屋の前には飲泉用の源泉が大きな岩から流れている。その大きな岩には真っ白な鱗状の析出物が付着していてとても綺麗。思わず接写モードで撮影した。弱い塩味である。さらに道を進むと大露天風呂のスペースになる。脱衣所と露天はガラス張りの窓で仕切られていて、ブルーの湯が目に飛び込んでくる。”コバルトブルーの湯”とキャッチコピーがついていたが、色は白濁系の水色である。何が美しいかというと、石に付着した真っ白な析出物である。そこに水色の湯が湛えられて、白砂の美しいビーチのようだった。メタケイ酸イオンを550mg含有するために青色に見える。Na-400,Cl-343,SO4-228、CO3-30 総計1780mg のNa-ClSO4泉であり、ツルツル感が強く、薄い塩味の湯であった。想像以上に広い露天で、開放感も抜群、真っ青な空に由布岳が映え、景観も素晴らしかった。湯の表面にうっすらと膜がはっていたのは何だろうか。
長湯温泉
ラムネ館
長湯温泉にはずっと行ってみたいと思っていた。日本屈指の炭酸泉を誇るラムネ館は建築家藤森氏の設計とのことで、とても変っている。芹川沿いに建つその建物は、高い三角屋根の上に松の枝が刺さり、焼杉と漆喰の外壁が遠目に白黒のストライプ壁に見える。敷地には熊笹が植えられ、八ヶ岳の美術館か?といった雰囲気であり、日本の温泉風情はない。母屋から一旦外にでて、中庭に出ると飲泉場があり、口に含む。シュワッと炭酸が口に広がり渋・苦味、金気味だった。休日ともなれば来客数も多いと思うが、意外に脱衣所は狭く、何故か浴室入り口の扉がにじり口のように小さく狭い。浴槽の淵や床は、きれいな褐色に染まり、湯は緑がかった黄土色にごり湯である。何の装飾もない白壁に湯の個性が浮き彫りにされた感じで視覚に印象的だ。そして土類臭の香りが充満する。内湯から露天への隔たりはなく、熊笹広がる敷地に長方形の浴槽が一つある。緑がかった弱い濁り湯で、32℃の源泉である。やや冷たいかな、という温度で静かに体を沈めると面白いように大きめの気泡がびっしりと体中に付着した。炭酸泉の泡の特徴は、その気泡の粒が大きいことと、産毛ではなく皮膚全体に付着し指先までびっしりと付く。炭酸以外の気体成分による泡付き湯はその泡を拭う時に一種のツルツル感を感じるのが特徴であるが、炭酸泉のそれは感じない。気泡を拭うその手にも粒の感触が残るような、しっかりとした気泡であった。CO2-1380mnを含む総計3662mgのMgNaCa-HCO3泉 内湯の湯は、42度の別源泉であり、味覚には炭酸を充分に感じるが、泡の付着はない。湯口は土類金属臭と炭酸の刺激臭、渋味・金気味。 館内には美術館も併設されており、休憩所もあった。
長湯温泉
ガニ湯
長湯温泉は芹川沿いに市営共同湯2ヶ所、野湯1ヶ所がある。芹川の川原脇に蟹の甲羅型をした野湯がある。野湯といっても、人工的に作られた湯船が何の囲いもなく丸見えの状態になっているというものである。幸い誰も入浴者はおらず、即効入浴を果たす。湯は明るい黄土色で透明度10p程度の濁り湯である。楽しいのは石で組まれた浴槽の淵にパイプの口が出ており、そこから不規則に湯が炭酸の刺激臭とともに飛び出してくる。金気よりも苦味が強く炭酸味は薄かった。休日というのにラッキーだった。
長湯温泉
長生湯
ガニ湯より先の橋のたもとに天満湯という市営共同湯があるが、お休みだった。橋を渡り向かいの長生湯という市営共同湯に行く。比較的新しい建物で、料金を入れるとドアが開く仕組みになっており、何人も芋づるで入場できないように、ドア前には一人用の回転扉が取り付けられ一人づつしか入場出来ない。回転扉の回し方が複雑で難義した。扇形の浴槽一つで、緑がかった褐色の濁り湯で浴槽も床も黄土色に染まっていた。掛け流しだったが、鮮度にはややかける気がする。
七里田温泉
下湯
長湯よりも炭酸が強烈といわれる七里田温泉は長湯より車で10分程度の距離である。小さな村落に日帰り専用の施設があり、その下に古い共同湯がある。共同湯は施錠されており、上の施設で鍵を借りて入場するシステムである。脱衣所より階下に浴室がある半地下作りになっていて、脱衣所の扉から覗き込んだ光景が素晴らしかった。赤茶褐色に染まった四角い浴槽に4名ほどの入浴者がおり、遠目にはっきりわかるくらいの気泡が次々と浮き上がっている。ジャグジーかと思うような光景だ。早速浴室に下りて入浴してみると、一瞬にして気泡に包まれ、しばらくするとその気泡がブクブクと体から離れていく。長湯と違ってお湯が綺麗に透き通っていて、これぞラムネ湯・サイダー湯でとても感動した。炭酸ガスが充満しないように、換気扇がまわっており、注意書きもあった。湯の温度が32度であるため、いつまでも炭酸体験を楽しんでいられる。口に含むと苦味、えぐみ、炭酸味である。長湯温泉のコーティングされたような析出物と違って、こちらはザラつく、赤茶色の析出物であり、同じ炭酸泉でも全く異なりとても楽しかった。