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山行日 | 平成14年8月20(火)〜22日(木) |
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天 候 | 前日とも晴れ 21日は時々曇り | ||||
人 数 | 二人 | ||||
行 程 | 8/20:上高地〜槍沢〜槍ケ岳 8/21:槍ケ岳〜北穂高岳〜涸沢 8/22:涸沢〜屏風の耳〜徳沢経由上高地 (パノラマコースを利用しました) |
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アクセス | 名神小牧ICより一宮Jにて東海北陸道へ 終点清見ICより高山を経て平湯温泉へ 平湯バスターミナルより安房トンネル方面へ右折し「村営あかんだな駐車場」にP 駐車場より上高地直通バス(平湯経由)が発車 ※駐車料金一泊500円 ※上高地往復1800円 ※P営業時間 午前5:00〜午後8:00 時間外は閉門されています。(H14,8.22現在) |
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槍沢をひたすら稜線目指して歩く | ||||||||
槍・穂縦走はかれこれ4年越しのチャレンジとなる。どのガイドブックを開いても、難度☆四つクラスの難所ルートであるが故に、日程、天候、体調ともに条件がそろわなくては挑めない。 本日、快晴、体もばっちり鍛えて、いざ槍の穂先目指して出発だ。 槍岳山荘までのコースタイムは約8時間、眠い目をこすりながら平坦な道を歩くが、ついに徳沢で小泉氏がダウン。1時間程、ベンチで仮眠(?)をとる。次の横尾でもゆっくりと休息し、ここからは気分が良くなったのか、調子よく歩く。木々の緑を映した槍沢はエメラルドグリーンに輝き、うっとりと見とれてしまう程の風景。しばらく進むと槍見河原、その名の通り槍ヶ岳の穂先が遠くに見えて気分も高揚する。 右から流れる一ノ俣、二ノ俣を過ぎると登山者で賑わう槍沢ロッジ。小屋の前には望遠鏡が設置され、覗くと槍ヶ岳山頂に立つ登山者が見える。水筒に水を満タンにして、さあ、望遠鏡の向こうへ。 |
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睡眠は元気の源、只今エネルギー充電中 | 輝く槍沢、この辺りでのんびりするのも良い | グリーンバンド、まだ余裕綽々です | ||||||
陽のあたる沢沿いに少しづつ高度を上げていくと、槍沢キャンプ地、そして水俣乗越との分岐。このあたりから傾斜がきつくなり息も荒くなってくるが、突然現れる槍の姿を目にすると、「もう、すぐじゃないか!」と元気づく。が!、いつまでたっても、穂先は近づかない。岩礫帯をジグザグに登る足取りは遅く、飴玉をしゃぶりながら、亀のように歩いた。 | ||||||||
痩せた尾根に所狭しと設けられたテント場は、寝ぼけてテントを出たら落っこちるんじゃないか、というような場所もある。今日など、張る場所はどこでもあるだろうに、と思うのだが、この断崖絶壁を住いとする登山者がいるのだ・・・と思っていたら、なんとこのテント場はパーティーの大きさによって場所を指定されてしまうのだ。 (私達のテントは大きいので場所を変えてもらった) クタクタになりながら、夕食をとり、明日の縦走路を想いながら、ちょっとした緊張の中、眠りにつく。 21日の朝はすがすがしい青空が広がる。朝日をうけた笠が岳稜線、双六岳から延びる西鎌尾根が生き生きと力強く伸びた枝のようだ。 |
朝日のあたる笠が岳稜線と西鎌尾根 | ||||
展望恐怖も緊張も霧の中、あるのは目前の岩のみ | ||||
大喰岳・中岳・南岳へと順調に稜線を歩くと、左手に天狗原と呼ばれるカールが見え、遠くには昨日歩いた槍沢が流れる。南岳ではだんだんと雲が出始めて、青空を隠していく。山頂直下の小屋でパンをかじって腹ごなし。まるで大キレットへの扉のように、 「この先、難所ルート、危険」という大きな看板が立っている。気持を引き締めて一歩を踏み出す。 ルンゼ状の岩場を急下降、垂直の岩に掛けられた長い梯子を下ると、ひとまず悪場は終わり、傾斜のゆるやかなザレ場を下る。 |
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すっかり霧に包まれ、先の長谷川ピークもおぼろげ。ピークに向けて岩場を慎重に登り、ナイフエッジ状のピークを、鎖に助けられながら進み、信州側から飛騨側にエッジ越えをする。単独の中年男性が一歩を踏み出せずに躊躇している。何とか踏み越えられたものの飛騨側への下りは不安げ。人のことを心配している余裕はないが、この調子で大丈夫なのだろうか・・・。 先をゆずってもらってしばらく下ると、A沢のコル。相変わらず視界は悪い。 小ピークをいくつか超えると、ほんの一瞬視界が開け、目の前に忽然と現れたナイフ状のピーク。その向こうには北穂北峰の岸壁が更に高く立ちはだかり、切れ落ちる足元は吸い込まれるように深い。”飛騨泣き”への登りは、取り付きの難しい岩もあり、考えながら慎重に登っていく。またしてもナイフエッジ状のピークが現れ、鎖場のトラバースに多いにビビリ、最後はもろい岩場の小ピークを超えて難所は終わり。後ろの若い二人組みが、岩場を越えるたびに奇声をあげるので、その度に気になってしかたがなかった。 ここからは北穂山頂に向けて、ひたすら登るのみ。危険度は少ないが、疲れた体にムチを打つような急登。高鳴る心臓の音を聞きながら北穂高小屋のテラスに到着。山頂から眺める大キレットは霧の中、この天候が幸いだったのか、恐怖感は思ったよりも感じずスムーズに縦走出来た気がする。しかしながら裏返せば、少々おもしろさ欠けるキレット越えだったとも言えるだろう。 |
←大キレット最低コルへの下り 一つ一つの岩が大きく、足が届かないところも | |
↑ 霧の中忽然と姿を見せた”飛騨泣き” う〜足がちょっと震える! | |
しばらく北穂山頂でのんびりすると、涸沢へ下山開始。これまた急下降で、南稜をジグザグに下っていくと、みるみるうちに正面の前穂高岳が高くなっていく。スラブ状の岩場にかけられた長い鎖を降り、一旦東側に折れてから、涸沢目指してガレ場を下る。転がっていきそうだね〜、と話していたら、本当に転がった。靴紐が引っかかり、小さな石に躓いたのだが、あっ!という間に見事にでんぐり返しをして尻餅をついていた。前のめりになった体にザックの重みが加わって、支えきれなくなったのだ。一瞬の出来事で、何が起こったのかわからなかったが、一息ついて青ざめた。こうして事故は起こるのだ・・・油断大敵とはこのことだ。 無事に涸沢につくと、疲労感、脱力感、安堵感に胸が一杯。まだ縦走の実感がわかず、夢の中の出来事だったようにも思える。大岩の上で月明かりに照らされる穂高の稜線を眺めながら、ウィスキー片手に長い一日を振り返った。 |
槍・穂高連峰にいだかれて |
天気も良いことだし、横尾に下りずにパノラマコースを歩くことにする。ここから屏風のコルまでは急なガレ場のトラバースが数箇所、また草付きの登山道も道幅がせまく、注意が必要だ。コルから痩せ尾根を東に進むと、屏風展望台との分岐(看板あり)。道は狭いが踏み跡はしっかりついている。身長程の草木のトンネルを抜けると、岩の塊が転がる賽の河原展望台。撮影ポイントとなるこの場所は、正に絶景!お椀のような涸沢カールや、槍ヶ岳稜線までもが見渡せ、そのスケールの大きさに圧倒される。賽の河原を超えて、踏み跡を辿ると、テント場のような広場に出る。左の狭い尾根に取り付き、一登りすると、切り立った小ピークが屏風の耳だ。ここからは槍・穂をつなぐ大キレットまでもが眺望でき、東側を覗けば、横尾山荘が模型のようにポツリと見える。ここからの展望がすばらしいのは、果てしなく見渡せる眺望ではなく、目の前でまるで手を広げて私を包み込んでくれているかのような圧倒的なスケールである。しっかり目に焼き付けたあの風景は今でも忘れられない。 屏風のコルまで戻り、横尾への登山道を下る。奥又白池との分岐を過ぎると、梓川に向かって伸びる登山道はなだらかになっていく。川原沿いの林道にでると、足取り軽くジョギングして徳沢へと向かった。肉体的にはクタクタのはずなのに、心は軽やか。日頃のつまらない悩みや苦しみを、みんな、この山々が洗い流してくれたからに違いない。 (報告者:A) |
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